実行委員長が語る 第11回映画祭作品解説+なぜ選んだか+見どころ

Aプログラム:「追憶と、踊りながら」

主人公は白人のイギリス人男性と、カンボジア系中国人の女性。
恋人を亡くしたゲイの男が、彼のお母さんを訪ねて介護ホームに行く。
恋人のお母さんの世話をしたいと思って、面会に行く。
死んだ息子と恋人同士だったことは言えず友人としてお母さんの面倒をみようとする。
ふたりは言葉がつうじない。英語と中国語だから。通訳を頼んで会話していく。
お母さんは愛する息子を失った悲しみがあるし、男も彼氏を失った悲しみがある。
最初は言葉も通じんし、ひげづらの白人男性だし、お母さんは最初怪訝そうな様子。
なんでこの人自分の面倒見に来るんだろう、って感じだったけど、だんだんと、ああこのひといい人なんやな、息子が大事にしとった友達だからいいひとなんやな、って感じで。
すごく仲良くなるわけじゃないんだけど、ちょっと距離が縮まるくらいの感じで。
男が恋人と一緒に住んでいた家にお母さんを招いて食事でもてなす。
実は恋人だったってことも伝える。泣きながら。ふたりとも泣く。
落ち着いて映像もきれいだし、情緒的っていうか雰囲気もいい。しっとりした映画。
小規模で作られた映画だけど、キャストもスタッフもよかった。
深い感動があった。こういう状況あるだろうな、日本でも。そう思える話。わたしは感動して泣いた。
新作。香川初公開です。

Bプログラム:短編集

「ある家族の肖像」

実験映画的なドキュメンタリーで、香川県三豊市に住む、田中と川田の男性同士のカップルの日常を追っている。彼らの生活と周りの人々との関係、ゲイカップルとして地域に普通に受け入れられている様子が描かれている。
インタビューでも『ぼくらはこれで生きていく』という、前向きにどうどうと生きていくんだという感じが出ていて、淡々としていながら力強さもある。
地元香川です。とにかく観て欲しい。

「娘さんを僕にください」

コメディドラマ。FTMの主人公ルイがじゅんこというガールフレンド(彼女)の両親のところに挨拶に行く話。どんでん返しがあって、テンポがよく、とにかく笑える作品。お父さん、お母さんの気持ちも描かれていて、それも見どころ。
監督からのメッセージは、「恋愛は、性別や体ではなくて心が大切なんだ」。

「leave us alone」

ヒューマンドラマ。主人公は若い男女カップル。同性愛者に対して嫌悪感を持つ彼氏にショックを受けた彼女は、大好きなおじさんがゲイだと彼に話す。動揺して酔いつぶれ親友にもゲイだとカムアウトされた彼氏が、混乱と妄想の末に認識を変えていく姿を描く。
いままでのノンケの視点とは少し違って面白い作品。

Cプログラム:「ソウル・フラワー・トレイン」

父と娘の話。田舎から大阪の大学に行ってる娘にお父さんが会いに行く。
どうも娘の暮らしぶりがなんかキラキラしておかしいなってだんだん勘付くんだけど、実は娘はストリップ劇場で踊ってる。
娘にはもうひとつ秘密があって、それはガールフレンドがいるっていうことなんだ。
人情とか、大阪の文化が描かれていたのがおもしろかった。あと、ストリップを悪く描いていないのがいい。
父と娘の絆が感じられて、爆笑のあとほろっとくるようなストーリー。
この映画の原作になった漫画を読んだのだが、こっちもテンポがよい。
漫画の世界の魅力を拾い上げて、伏線を張ってよくふくらませている映画。
LGBT映画というくくりには入らない映画かもしれない。LGBTQであることは自分のアイデンティティとしては大事だけれども、生活の中の一部にすぎない。この映画ではそのことが描かれている感じがした。
単純におもしろかった!大阪のロードムービーです。

(インタビューbyあゆうこ)